活動報告

朝鮮高校の無償化申請手続停止に抗議する緊急声明

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2010年11月27日

2010年11月23日の南北朝鮮の砲撃戦を受けて、管直人内閣総理大臣が朝鮮高校への無償化適用審査の緊急停止を指示したことを受け、愛知朝鮮高級学校で開かれた緊急記者会見にて、抗議声明を発表しました。以下、転載します。

2010年11月27日

内閣総理大臣 菅直人 殿
文部科学大臣 高木義明 殿

朝鮮高校の無償化申請手続停止に抗議する緊急声明

  1. 文部科学省は、去る11月5日、本年4月に施行された「高校無償化」の朝鮮学校生徒への適用基準について、教育内容は問わずに、日本の専修学校と同等の基準で制度的・客観的に審査すると決定しました。高木義明文部科学大臣の談話によれば、上記基準は、「すべての意志ある生徒の学びを保障し、家庭の状況にかかわらず、安心して勉学に打ち込める社会をつくる」という無償化法の目的及び学校ではなく生徒個人が支給対象であることを踏まえて決定されたとのことです。政府のこのような判断は、日本の批准する国際人権A規約などの精神に照らして、きわめて妥当なものと評価できます。報道によると、同決定に従い、無償化審査の申請期限が今月30日と定められ、すでに7校の朝鮮学校が申請の意思を伝えていたということです。
  2. ところが、今月23日に起きた大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国との砲撃戦を受けて、管直人内閣総理大臣は24日、文部科学大臣に対し無償化制度の適用プロセスを停止してほしいとの指示を出したことを明らかにしました。同じ日、高木義明文部科学大臣も、政治と教育の問題を混同してはならないとの従来の考えは変わらないとしながら、「朝鮮学校の授業料無償化制度適用についての影響は極めて大きい」、「重大な判断が迫られる可能性がある」として、朝鮮学校の無償化申請を受理しない可能性を示唆しました。
  3. しかし、日本で生まれ、日本に永住する在日4世、5世の生徒たちと、今回の朝鮮半島における砲撃戦に何ら関わりがないことは事理明白です。それにもかかわらず、今回の砲撃戦と朝鮮学校の生徒たちを結びつけて、政府が、自ら決定した無償化プロセスに反する行動をとることは、無償化は「外交上の配慮などにより判断するべきものではなく、教育上の観点から客観的に判断すべき」という政府統一見解を自ら覆す暴挙に他ならず、平等な教育機会の保障という無償化法の趣旨すら没却しかねないものです。
  4. 無償化プロセス停止の理由については、国民の税金を使うことに国民の理解が得られるか、プロセスを止めて検討するためとの報道がなされています。しかし、政府は、朝鮮学校への適用基準を、教育制度の専門家による検討会議や、与党民主党の政策調査会における検討などを経て決定しているところ、当時から大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国が休戦状態の国家であって、今回のごとき紛争が起こりうることは公知の事実でした。よって、政府としては当然に、上記検討プロセスにおいて、その事実を踏まえて、教育問題について外交問題は考慮しないとの結論に達したはずです。仮にそのような可能性を全く考慮していなかったとすれば、それはあまりに軽はずみな責任のない態度であり、政治と教育の問題を混同しないとの行動理念は、建前に過ぎなかったと受け止めざるをえません。
  5. 過去、朝鮮半島情勢が緊張するたびに、朝鮮学校生徒への市民による暴行、脅迫事件が繰り返された歴史的事実があります。しかし、今回の無償化プロセス停止は、市民への人権侵害を防止すべき立場にある政府自ら、率先して外交問題と特定民族学校の生徒を結びつける差別行為を容認したことを意味します。私たちは、このように悪質な差別的措置に対して断固抗議します。
  6. 私たち「朝鮮高校にも差別なく無償化適用を求めるネットワーク愛知」は、朝鮮学校にも差別なく高校無償化が適用されることを求めて、愛知朝鮮高級学校の生徒たちと共に署名活動、街頭宣伝、学習会、無償化要請活動などを行ってきました。ある生徒は「日本は僕たちが生まれ育った大切な国。日本が子どもを差別する国であってほしくない」と無償化への思いを訴えました。日本の地で真剣に学んでいる朝鮮学校の生徒らを、他の外国人学校の生徒と区別する除外措置は、国連人種差別撤廃員会も認める人権侵害であり、即刻無償化が適用されるべきです。ましてや、生徒らとは何の関係もない外交上の問題により、あからさまに生徒らを差別することが許される理由はどこにもありません。
  7. よって、私たちは、政府及び文部科学省に対し、朝鮮学校への無償化プロセス停止を即時撤回し、文部科学省が定めた朝鮮学校への無償化適用基準に従い、すみやかに朝鮮学校生徒への「無償化法」適用を最終決定することを強く求めます。

「朝鮮高校にも差別なく無償化適用を求めるネットワーク愛知」
(呼びかけ人)
飯島滋明(名古屋学院大学准教授)
磯貝治良(作家・在日朝鮮人作家を読む会)
内河惠一(弁護士)
小野政美(愛知県公立小学校教員)
河田昌東(四日市大学教員)
金癸任(東春朝鮮初学校オモニ会会長)
金伸治(愛知朝鮮中高級学校校長)
権順子(豊橋朝鮮初級学校オモニ会会長)
申香淑(名古屋朝鮮初級学校オモニ会会長)
竹内宏一(日朝教育・文化交流をすすめる愛知の会事務局長)
寺尾光身(名古屋工業大学名誉教授)
原科浩(大同大学教授)
久田光政(東海高校教員)
裵鐘石(名古屋工業大学教授)
裵明玉(弁護士)
許玉禮(愛知朝鮮中高級学校オモニ会会長)
松井妙子(愛知県青年団協議会事務局長)
水田洋(名古屋大学名誉教授)
李博之(愛知朝鮮学園理事長)
安川寿之輔(名古屋大学名誉教授)
山本かほり(愛知県立大学准教授)
李直美(愛知朝鮮第7初級学校オモニ会会長)
林重彦(愛知朝鮮中高級学校教育会会長)

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