活動報告

朝鮮学校への「高校無償化」適用停止手続きの即時再開と 「高校無償化」の即時適用を求める声明 を文部科学大臣らに送付しました。

カテゴリー: 活動報告

2011年2月7日

内閣総理大臣 菅直人 殿
文部科学大臣 高木義明殿

2011年2月7日

朝鮮学校への「高校無償化」適用停止手続きの即時再開と「高校無償化」の即時適用を求める声明

朝鮮高校にも差別なく無償化適用を求めるネットワーク愛知
<共同代表>
磯貝 治良(作家・在日朝鮮人作家を読む会)
内河 惠一(弁護士・愛知県弁護士会)
金 伸治 (愛知朝鮮中高級学校校長)
竹内 宏一(日朝教育・文化交流をすすめる愛知の会事務局長)
裵 明玉  (弁護士・愛知県弁護士会)
許 玉禮 (愛知朝鮮中高級学校オモニ会会長)
水田 洋 (名古屋大学名誉教授)
李 博之 (愛知朝鮮学園理事長)
安川寿之輔(名古屋大学名誉教授)
山本かほり(愛知県立大学准教授)
「朝鮮高校にも差別なく無償化適用を求めるネットワーク愛知」

  1. 2月5日の新聞各社の報道によれば、文部科学大臣は、朝鮮学校に対して、「高校無償化」適用の審査手続きを再開しないと通知したとされています。
    新聞報道によれば、「北朝鮮による韓国砲撃に伴い、政府が朝鮮学校への高校授業料無償化適用の審査手続きを停止している問題で、高木文部科学相は4日、東京都内の朝鮮学校を運営する学校法人から出された行政不服審査法に基づく不作為の異議申し立てに対し、現時点では審査手続きを再開しないことを通知した」(読売新聞2/5朝刊)とのことです。「通知」には、「砲撃は我が国を含む北東アジア地域全体の平和と安全を損なうもの」とし、無償化の審査手続き停止の理由を「政府を挙げて情報収集に努めるとともに、不測の事態に備え、万全の態勢を整えるため」と明記したとされています。また、高木義明文部科学大臣は記者団の質問に対し、「審査手続き開始の条件について、北朝鮮が韓国との緊張緩和の姿勢を明らかに示すことなどが必要だと指摘した。」と話した(読売新聞 2月5日(土)朝刊)とも報道されています。
  2. 東京朝鮮学園など朝鮮学校に、2月4日夜、文部科学大臣 高木義明名で届いた「通知」(22文科初第1653号:平成23年2月4日)では、以下のように書かれています。「平成22年11月23日の北朝鮮による砲撃が、我が国を含む北東アジア地域全体の平和と安全を損なうものであり、政府を挙げて情報収集に努めるとともに、不測の事態に備え、万全の態勢を整えていく必要があることに鑑み、当該指定手続きを一旦停止しているものです」。
  3. 私たち「ネットワーク愛知」は、子どもの学びの場に政治的意図に基づく差別を持ち込む「無償化」審査停止措置は、不当な措置であり、今回の「審査手続を再開せず」との通知に対し、断固抗議します。
    そして、文部科学省が、文部科学省が定めた「規程」に従い、子どもの学びの場に政治的意図に基づく差別を持ち込む「無償化」審査停止を即時撤回し、一刻も早く朝鮮学校生徒への「無償化」適用を最終決定することを強く求めるものです。
  4. この「通知」に対しては、「全国朝鮮高校校長会会長コメント」(校長会会長 愼 吉 雄)が、2011年2月4日付で、以下のように出されています。「私たちの切実な願いや世論を無視し、授業料無償化の手続きを再開させないという文部科学省の対応に驚きと憤りを禁じえないでいる。今回の対応は誠に不誠実なものであり、到底受け入れられるものではない。今回の手続きを再開させないという「理由」は弁明に過ぎず、その根拠も全く理解できないものである。文部科学省の対応は「子供の学びは政治や外交と切り分けて社会全体で支える」という民主党政権が掲げた高校無償化の理念と乖離したものである。このままだと高校3年生たちは就学支援金の恩恵を受けることなく卒業する事になる。こうした対応は彼らをはじめとする朝鮮学校生徒たちの心に深い傷を残すことになる。私たちは、日本政府が速やかに手続きを再開し、朝鮮学校生徒にも差別なく高校無償化を即時適用することを切に望むものである」。
  5. 今回の「無償化手続き停止」措置の不法不当性については、社団法人・自由人権協会の1.17声明(「朝鮮高校生への高校無償化法の適用手続を速やかに進めることを求める声明」)が、以下に明確に指摘した通りです。
    「今回の手続きの「停止」措置は、高校無償化法及び関連法令に何ら定めがあるものではなく、外交及び防衛上の観点からの一種の超法規的措置というほかない。しかし、この「停止」措置が行政手続法に違反することは明らかである。すなわち、行政手続法は、申請に対する審査、応答として「行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく審査を開始しなければなら(ない)」(7条)と定めている。この趣旨は、行政庁が速やかに審査を開始する義務を定め、申請に対する処分の迅速で公正な処理を確保しようとするものである。したがって、申請が行政庁の事務所へ到達すれば、行政庁は「遅滞なく」審査を開始する義務が生じる。朝鮮高校はすでに申請を済ませ、申請が文部科学省に到達している以上、行政手続法7条の規定にしたがって、同省は遅滞なく審査を開始し、その諾否についての処分を行なわなければならない。文部科学省が、迅速に審査を行うことが出来るにもかかわらず、これを怠っていることは行政手続法7条に違反する。なお、高校無償化法に基づく指定に関する申請手続については法令上、処分をすべき期限は定められてはいないものの、2010年度の就学支援金については、本年3月までに支給がなされなければ、朝鮮高校生は2010年度の同支援金の受給を受けられないこととなる。ことに、3年生についてはこの不利益は多大である。したがって、審査は直ちに、少なくとも1月下旬までには行われなければならないはずである。この期間を徒過すれば、処分を行なわないという不作為が、相当の期間が徒過したものとして違法となることは明らかである」。
  6. 「高校無償化」は、「すべての意志ある生徒の学びを保障し、家庭の状況にかかわらず、安心して勉学に打ち込める社会をつくる」目的で生徒の授業料負担を軽減するものであり、制度施行初期から、中国人学校、ブラジル人学校、インターナショナルスクールなどの外国人学校の生徒も対象とされました。
    それにもかかわらず、政府は、朝鮮学校のみを「無償化」から除外し、朝鮮学校に「無償化」が適用されるか否かの判断を引き延ばし続けました。これは、朝鮮学校生徒のみを差別する点で、「高校無償化」の趣旨に反するばかりか、日本国憲法、教育基本法、国連人権規約、人種差別撤廃条約に違反する民族差別であり、日本全国の市民、団体、はては大韓民国など諸外国の市民、団体からも反対の声が上がりました。これら市民の懸命の呼びかけの結果、文部科学省は11月5日、ついに朝鮮学校に無償化適用を認める内容の「規程」を発表し、やっと朝鮮学校の生徒たちも「無償化」の対象とされるかと思われました。
  7. しかし、文部科学省は、11月23日の「砲撃事件」を受けて、朝鮮学校による「高校無償化」の申請は予定通り11月30日まで受理するが、現状では審査を「停止」することを正式に発表しました。文部科学大臣は、「停止」措置について、内閣総理大臣の指示に基づき、「平和を脅かす特別な想定外の事態」に対応したものと説明しています。
    私たちは、「無償化」審査停止は、子どもの学びの場に政治的意図に基づく差別を持ち込むものであり、決して許され得ない不当な措置だと考えます。
    日本で生まれた朝鮮学校の生徒たちが、「平和を脅かす事態」とどのような関係にあるというのでしょうか。今後も朝鮮半島で軍事的緊張が高まるたびに、子どもたちの学びの権利が踏みにじられるならば、子どもたちの心を傷つけ、取り返しのつかない恐怖と憎悪を刻印することになります。人間にとって学びは、民族や政治的立場による違いを相互に理解した上で、友好を深め合う礎となるものです。私たちの社会が平和であるためにこそ、学びの権利はすべての子どもたちに平等に保障されるべきです。
  8. 政府は、「高校無償化」について、「外交上の配慮などにより判断すべきものではなく、教育上の観点から客観的に判断すべき」ことを統一見解としてきました。この統一見解の精神に、もう一度立ち返り、即時に朝鮮学校への無償化審査を開始すべきです。

私たちは、2月4日の文部科学省による、朝鮮学校への「審査停止手続き」を再開せずとの「回答」に対し、ここに、断固抗議するものです。

私たちは、文部科学省に対し、文部科学省が定めた「規程」に従い、子どもの学びの場に政治的意図に基づく差別を持ち込む「無償化」審査停止を即時撤回し、一刻も早く朝鮮学校生徒への「無償化」適用を最終決定することを強く求めます。

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