裁判について

朝鮮高校生就学支援金違憲国家賠償請求裁判 Q&A

Q 朝鮮高校が無償化から外された問題で生徒さんが裁判を起こしていると聞きましたが…?

A 2013年1月24日、名古屋地方裁判所に、愛知朝鮮中高級学校の高級部の生徒・卒業生が、国家賠償請求裁判を起こしました。

Q 愛知朝鮮中高級学校はどんな学校ですか?

A 東海、北陸・信越地方で唯一、日本に在留する朝鮮人の子女のため、朝鮮語による民族教育を行う高校相当の課程を持つ学校です。植民地時代に禁止されていた朝鮮語・朝鮮史を教えるために、在日朝鮮人が解放後(日本にとっては敗戦後)に開いた国語講習所が前身です。

Q 朝鮮学校の入学資格はどうなっていますか?

A 朝鮮半島にルーツを持つ在日朝鮮人の子女に入学資格があります。国籍の限定はなく、韓国・朝鮮籍、日本国籍など様々な国籍の子どもたちが学んでいます。

Q そもそも高校無償化とは何ですか?学校への補助金とは違うのですか?

A 高校無償化とは、「教育の機会均等への寄与」を目的として

  1. 公立高校の授業料を無償にし、
  2. 私立学校等の生徒には、公立高校の授業料と同じ額を就学支援金として支給する制度です。学校に対する補助金とは違い、生徒個人に支給されます。

Q 外国人学校である朝鮮高校が「無償化」されないのは当たり前ではないですか?

A 就学支援金は、日本の私立学校だけでなく、文部科学大臣の指定を受けた各種学校である外国人学校の生徒も対象にしています。

Q ほかの外国人学校の生徒は就学支援金を受けているのですか?

A ブラジル学校、中華学校、韓国学校、インターナショナルスクールなど、39校の外国人学校が文部科学大臣の指定を受けています。朝鮮学校だけが除外されているのです。

Q 朝鮮学校は、外国人学校が「無償化」の対象とされる場合の基準を充たしているのですか?

A 2010年度に文部科学省が定めた朝鮮学校への就学支援金支給の基準は、制度的・客観的に見て、高等学校の課程に類すること、というものでした。朝鮮学校は、公立高校と同じ3年制で、民族教育科目を除いて学習指導要領に準拠したカリキュラムで教育を行っており、基準を満たしていました。
しかし、自民党政権に交代した後の2013年2月20日、下村博文文部科学大臣は、朝鮮学校の「無償化」指定の根拠とされていた省令を、「拉致問題の進展がない」「朝鮮総連との密接な関係」から国民の理解を得られないとして、一方的に廃止しました。朝鮮学校が、2010年度の基準に基づいて申請を行った後、2年以上放置した挙げ句の措置でした。

Q 国のどんな行為が憲法違反に当たるのですか?

  1. 国は、高校生には何の責任もない拉致問題などの政治・外交上の理由、また国による支援のない朝鮮学校を長年支援してきた朝鮮総連との関係を理由に、就学支援金を不支給としました。このことは、朝鮮高校生を、ほかの外国人学校や私立学校の生徒と差別する点で、平等権(憲法14条)を侵害しています。
  2. 高校生が、家庭の経済状況に関係なく学び続けるための就学支援金を支給しないことで、朝鮮高校生の学習権(憲法26条)を侵害しています。
  3. 植民地支配を受けた民族の出身である朝鮮学校の生徒には、自らのルーツと民族の言葉を学び、民族の文化を継承・享有しながら人格を形成、発展させる権利があります。朝鮮学校の生徒であることにより不利益を与える政府の態度は、原告達の人格形成過程を侵害し、人格権(憲法13条)を侵害するものです。

Q 日本が批准する国際人権条約との関係では問題はないのですか?

A 2010年2月、国連の人種差別撤廃委員会は、「現在(日本の)国会にて提案されている公立及び私立の高校、専修学校並びに高校に相当する課程を置く多様な機関の授業料を無償とする法制度変更において、北朝鮮の学校を除外することを示唆する複数の政治家の姿勢」に対し、「子どもの教育に差別的な影響を及ぼす」として懸念を表明し、「教育機会の提供において差別がないこと」を勧告しています。

 

Q 朝鮮学校が日本の学校と違う見方で歴史などを教えていても、「無償化」しないのは差別に当たるのですか?

A 日本が批准している子どもの権利条約は、すべての子どもが自民族の言葉と自国の価値観を学ぶ権利を認めています。
また、政府は、中華学校や韓国学校が植民地期の日本の政策についてどう教えているか、アメリカンスクールが原爆投下についてどう教えているかなどには干渉していません。朝鮮学校に対してのみ法律を踏み越えた干渉をすることは明白な差別です。

Q 朝鮮学校が「北朝鮮」と関係が深いのは問題ではないですか?

A 朝鮮学校は植民地で奪われた言葉を取り戻すための教育施設でしたが、義務教育学校ではないとの理由で、二度にわたる閉鎖命令という過酷な弾圧を受けました。1948年には、閉鎖反対のデモに参加した16歳の朝鮮人の少年が警察の銃撃の犠牲となり死亡する事件も起きています。このような政府による弾圧と在日朝鮮人の貧困により、学校運営が困難を極める中、1957年から朝鮮学校に教育援助費を送り、支援を続けたのが朝鮮民主主義人民共和国です。この援助により、多くの貧しい子ども達が民族教育を受けることができるようになりました。このようにして培われた朝鮮学校と同国の関係に対して、没歴史的に批判することはまちがっています。

Q 原告は裁判で何を求めているのですか?

A 国の違法な差別により、高校無償化から除外されたことに対する慰謝料を求めています。原告たちは、2010年から何度も勉強や部活の合間をぬって、署名活動、ビラ配り、文部科学省への要請などの努力を続けてきましたが、政府は原告たちの必死の願いに背を背け、拉致問題と朝鮮学校を結びつけることで、朝鮮学校に対する社会的な差別を高めさえしました。日本政府は、在日朝鮮人として、誇りを持って生きたいと願う原告たちの心を大きく傷つけたのです。

Q 高校無償化で高校生がいる家庭の特定扶養控除が廃止されましたが、影響がありますか?

A 朝鮮高校生のいる家庭では、就学支援金を受けられない上に、特定扶養控除も廃止されたので、経済的な負担が重くなっています。外国人も日本人と同じく税金を納めており、現状は、義務だけは同じで、権利は取り上げられた状態です。

▲ このページの先頭にもどる

入会のご案内 賛同・カンパのお願い