高校2年生・女性
「高校授業料無償化・就学支援金制度」…日本のすべての子ども達が、好きなように学べるよう、成立した制度。しかし、日本政府は、「北朝鮮との国交がない」、「北朝鮮は敵対国だ」という理由で、その対象から朝鮮学校だけ除外したのです。
どうしてそんなことで、私たちを仲間はずれにするのでしょう。制度の対象は私たち学生です。国の関係で決めても良いのでしょうか?
「朝鮮学校にも高校無償化適用を!」こう叫びながら私は、高校に入学してから今まで、幾度も街頭に立ちました。暑い日も寒い日も、日本政府の民族差別に学生、先生達、トンポ達や日本の友人が、一丸となって立ち向かいました。
初めて署名活動に参加した日―
「署名ご協力お願いします。」
「何の署名ですか?」
「朝鮮高校にも無償化が適用されるための署名です。」
「えっ、無償化されてないの?」
「外国人学校だから仕方ないんじゃないの?」
「朝鮮学校って韓国の学校?それとも北?」
「朝鮮学校ってなに?」
もちろん、暖かい言葉を掛けてくれる方々も大勢いましたが、こうした声はあまりにも衝撃的でした。ウリハッキョの事、ほとんどの人が全然知らないんだ…。私はとにかく朝鮮学校の本当の姿をわかってもらいたくて、もっと関心を持って欲しくて、高まる恐怖心を抑え一人の若い男性に言ってみたのです。
「朝鮮学校では日本の学校と同じように英語や数学、日本語だって習っています。それに自分の国の言葉や歴史を思いきり勉強できるし、クラブ活動ではサッカー部や声楽部、朝鮮舞踊部などがあって、朝鮮の文化をたくさん習得できるんですよ。それなのに私たちの学校だけ、無償化の対象から外されたのです。酷いと思いませんか?」つい熱くなって無我夢中で喋り続けてしまっていました。
何を言われるか怖くなって、額から冷や汗を感じるくらいでした。しかし、その男性は、「君に聞くまで何も分からなかったよ、ありがとう。頑張つてね!」と署名を書いてくれました。そのときの喜びは、今になっても忘れることは出来ません。
ウリナラの事を話す政治家、テレビのアナウンサー、電車の広告…みんな誤解しています。でも、もしみんなが少しでもウリハッキョ、ウリ学生たちについて関心を持って知ろうとしてくれたら、誤解なんて生まれるでしょうか?本当のことを知った時、朝鮮学校を無償化から除外できるでしょうか?それでも北朝鮮を敵対視するのでしょうか?
全ての問題の解決策、それは理解すること、相手のことを知ろうとする心だと思います。私はウリハッキョが大好きです。そんなウリハッキョを、もっと沢山の人に知ってもらいたいです。
高校無償化問題、日本政府の朝鮮学校に対する民族差別は、多くの在日同胞の胸を痛め、プライドを踏みにじりました。
朝鮮学校にも高校無償化適用を!」私はこれからも、在日朝鮮人としての自尊心を守るために、それから在日朝鮮人のこと、朝鮮学校のことを少しでも多くの人に知ってもらうため、闘い続けます。
高校3年生・男性
人は生まれた時、その生まれる環境を選べません。僕は生まれたその時から在日朝鮮人でした。母のことをオモニと呼び、ご飯の時はハルモニの作ったキムチが並ぶ、そんな環境で育ちました。両親は幼稚国の時から僕を朝鮮学校へ通わせてくれました。今でもそのことを本当に感謝しています。
日本では在日朝鮮人が肩身の狭い思いをしているのはずっと感じてきましたが、もし日本学校へ通っていたら自分が在日朝鮮人であることに疑問を抱いたり、隠そうとしたり、日本人になりたい、そんな風に思っていたのかもしれません。
自分の生まれ育った環境に対して、背徳感をもちながら生きていかなければならなかったかもしれません。今ぼくは、自分の民族にも、在日同胞社会にも、朝鮮人であることにも誇りを感じています。
朝鮮学校高校無償化除外の知らせは、そんな僕の誇りに大きく突き刺さりました。自分が人生の中で一番信じて、一番素晴らしいものだと思っていたものは、日本政府にとって煩わしくて邪魔で、あからさまな差別の対象だったです。
僕は日本政府に言いたい。あなた達は民族の誇りを守るために、一日も休まず2時半の登下校をしたことがあるのか?自分たちの学校を守るために、真夏の一番熱い時期に、何時間もビラを配ったことがあるのか?と。
僕たちは、自分たちの学校が、誇りが、日本社会にも認められて、手を取り合って助けあって、そんな社会が生まれることを強く望んでいます。
僕たちは自分たちの誇りを守るために、最後まで闘います。
2013年1月24日名古屋地裁への提訴に寄せられた原告のメッセージ
【原告A】
2010年4月から「高校無償化」が実施され全国の日本学校及び「一部を除く外国人学校」に適用されました。その一部が朝鮮学校です。しかも現在も朝鮮学校だけが適用外とされています。僕は最初その知らせを聞いた時怒りより先に「なぜ?」という思いが先立ちました。その後「どう考えてもおかしい」という思いとともに街頭宣伝や署名活動を幾度となく行ってきました。その過程で自分自身気づいたことがあります。
それは、この問題が単純なお金の問題ではなく、朝鮮人としての尊厳を踏みにじられた差別だということです。僕たち朝高生は日本の高校となんら変わりない授業を受けて部活動もして「健全な学校生活」をおくっています。違いは朝鮮人として朝鮮学校に通っているということだけです。朝鮮と日本の歴史をみると外交上様々な衝突があると思いますが、僕らの学ぶ権利とは無関係だと思うのです。
しかし日本政府は2010年から今日に至るまで、「適用する方向」だと言ってみたり、「適用を延期」、「凍結」だと言ってみたり、そういった情報の中で僕たち学生は精神的にとても疲れ、混乱の中で生活してきました。また政権が変わった昨年末、朝鮮学校には無償化を適用しない方針を固めました。
僕はもう怒りを抑えることができません。僕たち学生の気持ちをどこまでもてあそび、傷つければ気が済むんでしょうか?この行き場のない気持ちを色んな人に知ってもらいたいです。無償化が適用され一日も早くこういう苦悩から解放されることを望みます。
【原告B】
「高校無償化」の適用対象から朝鮮学校が除外され、4年が経とうとしています。街頭での署名活動やビラ配り・・・
日本政府に必ず声が届くことを信じて、暑い日も寒い日も、部活を中止してまで出かけました。
「適用のための審査をする。」と私たちの学校にも文科省の方々がいらっしゃいました。やっと努力が報われる、とても嬉しい気持ちでした。
しかし、その「審査」も外交上の問題で停止に。政権が自民党に代わった今、ついに朝鮮学校は無償化対象から完全に除外されようとしています。本当に寂しく空しい。
私達はスパイでも工作員でもありません。かつての日本国による植民地支配の負の遺産-在日コリアン3世、4世-の学生です。母国の言葉、歴史や文化を学ぶ権利は、誰にでもあるのに。
朝鮮学校の学生達は日本の政府により、何度も大切な気持ちを踏みにじられました。決して許しません。
【原告C】
「高校無償化」から朝鮮学校のみ除外されて当初自分は単純にその事実に疑問を抱きました。自分達はこの制度を通して父母の負担を少しでも軽くすることができると期待したものです。ところがなぜ未だに朝鮮学校のみ「無償化」から除外されたままなのでしょうか?
とても疑問です。除外される理由の中に教育の内容が明確ではないという「時」がありました。自分たちが在日朝鮮人としてのアイデンティティを確立していくために自分たちの国の言葉、歴史を勉強し使うことは、そんなにもいけないことでしょうか? 朝鮮学校は、朝鮮総聯の指導を受けており総聯は北朝鮮の指導を受けているからという「時」もありました。教育と政治を混同してはいけないという日本政府の言葉は偽りなのでしょうか?
この問題と向き合うにつれ当初の疑問は憤りへと変わりました。
「高校無償化」適用を求める今までの闘いは長引くにつれて自分たちから一つ、また一つ下の代へとその苦しみが広がっていっています。
自分たちの代でこの苦しみを終わらせる事が出来なかったことが本当に心残りだと胸を痛めながら僕たちは当時卒業をむかえました。決して許すことができないです。
僕たちは決してあきらめません。正しいことが正しいと認められる事を信じて。
【原告D】
当初「高校無償化」の話を聞き父母や学校への負担が減ると思い友達とともにすごく喜んだ事を鮮明に覚えています。
ですが朝鮮学校だけ適用されないと聞いた時にとても残念に思いました。
と同時に日本政府に対する怒りすら感じ、絶対あきらめてはならないとも思いました。
それからは署名活動や街頭宣伝など、たくさんの活動を行いました。その中で学校や父母だけではなく、日本の弁護士の方やたくさんの日本の方にも協力していただきました。
僕たちのためにこんなにたくさんの活動をしていただく事に対し本当に感謝していましたし、この恩を返すには最後の最後まであきらめることなく、問題にぶつかっていくこと、そして必ず無償化を実現させることだと思いました。そして何度も「無償化」が実現されると思った矢先に、何かと政治的な問題を理由でことごとく先送りされてきました。
結果、昨年末の選挙で自民党が勝ち、「無償化」はしないと断言されました。
すごく残念です。それと今まで協力していただいたたくさんの方々に申し訳ない思いでいっぱいです。今までやってきたことが全て無駄だったかと思い涙を流す子もたくさんいました。
なぜ僕たちだけなんでしょうか? 学んでいることは日本の学校と変わらない。
母国語を話し、母国についても学んでいる。これがダメなんでしょうか?
それなら他の適用済みの外国人学校と同様、無償化すべきではないんでしょうか?
朝鮮総聯と関係があってはならないといいますが何故でしょうか?
学校の為に本国からの支援があってもいいんじゃないでしょうか?
今までやってきた活動を含め、この怒りや悲しみをどこにぶつければいいのですか?
今回の裁判ですべてが「正しい方向」に向かう事を切に願います。
【原告E】
高校3年生の夏にあった出来事を私は今でも時折思い出します。
街頭で朝鮮学校を「高校無償化」から外す事を反対するビラ配りや署名活動をしていた時でした。焼けるような日差しの下、私達は一生懸命通りかかった人たちにうったえました。そのうったえに返って来たのは、「そういうのいいから」という日本の方の一言でした。もちろん応援してくれる方々はたくさんいたのですが、その一言でどれだけ私達の心が痛んだかわかりません。まるで私達に学ぶ権利なんてあるはずが無いだろうとでも言うかのように、その日本の方は去って行きました。
あれから私達は高校を卒業しました。
この間日本政府は政治的問題を教育と結びつけて朝鮮学校に通う子供たちに希望を見せたかと思うとそれをことごとく打ち砕いてきました。
私は朝鮮学校で学ぶ後輩たちが私達と同じつらい思いをしていると思うと胸が張り裂ける思いです。それなのに、今日本政府は自らが定めた法を変えてまで朝鮮学校に通う子供たちの未来を奪おうとしています。こんな事がなぜ許されるのでしょうか?
学ぶ権利はすべての子供たちに与えられる権利のはずです。 私は日本政府に遺憾の意を表すとともに差別を無くし、朝鮮学校にも「無償化」が適用されることを心から望みます。