2013年1月24日
提訴にむけてのネットワーク愛知の声明
私たち,朝鮮高校にも差別なく無償化適用を求めるネットワーク愛知(ネットワーク愛知)は,強い憤りをもって,今,この場に参席しています。
「すべての意志ある高校生に学びの支援をする」という趣旨ではじまった「高校無償化」制度は,各種学校認可をうけた外国人学校生徒をも支給の対象とする点で画期的なものだと評価しておりました。しかし,「拉致問題」等,朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)との政治外交上の問題を理由に朝鮮高級学校(朝鮮高校)の生徒だけが支給の対象から排除され,この制度はスタートしました。
支給開始から3年近く,朝鮮高校の生徒をはじめとする学校関係者は何度も何度も,暑い日も寒い日も街頭にたち,「一日も早い適用を!」と訴え,署名を集め,そして,文部科学省まで何度も要請にでかけました。そして,私たちネットワーク愛知も,生徒たちやその保護者たち,そして朝鮮高校の教職員の方々と一緒に適用の実現を願って,ともに活動を行ってきました。
この間,事態は二転三転し,私たちは何度も希望を見いだし,そしてそれが大きな失望にかわるということを経験してきました。そして,昨年12月末に発足した自民党・安倍晋三内閣は,発足と同時に「不適用」という決断を下しました。さらには,省令を改悪し,朝鮮高校に無償化制度を適用するための法的根拠をなくそうという「暴挙」にも出ようとしております。これまで,民主党政権下においては「審査中」という名目で,いつまでも判断を下さず,朝鮮高校の生徒たちを苦しめてきました。新内閣はその審査の結果も発表しないまま,朝鮮高校と朝鮮総連や朝鮮との関係を問題視し,それを理由に「国民の理解が得られない」と結論づけたのです。
私たちは,日本政府のこの公然たる露骨な差別を決して許すことができません。そもそも,関係法規にてらしてみると,朝鮮高校の生徒たちだけを「無償化制度」から排除する根拠は一切ありません。朝鮮高校の生徒たちには無償化が適用される当然の権利があるのです。その権利を「国民の理解が得られない」というロジックで剥奪し,それを正当化するのは断じて許すことができないものです。
また,朝鮮高校が朝鮮総連や朝鮮と深い関係をもっていることを批判し,それを排除の根拠としておりますが,その批判は,日本がこれまで在日朝鮮人に対して行ってきた様々な差別的な政策を省みることなく,没歴史的にその関係を批判しているにすぎません。そもそも,なぜ,朝鮮高校と朝鮮総連や朝鮮が関係をもっていることが「悪」なのかという説明も一切なく,日本社会に蔓延する「拉致情緒」や「北朝鮮バッシング」のムードに乗じて,差別を正当化しているにすぎないのです。
朝鮮高校の生徒や卒業生たちは「このまま泣き寝入りできない」と自らが原告となりこの不当性を問うと決心いたしました。そして,準備と議論を重ね,本日,名古屋地方裁判所への提訴といたしました。
しかし,原告はまだ,自分のこれからの人生を一生懸命に考えていかなければならない若者たちです。私たち大人が,そして日本社会が,彼・彼女たちにこのような「試練」を与えることになったことを,ネットワーク愛知一同,非常に重くそして悔しい思いで受け止めています。本来ならば,自分のことだけに集中して,青春のひとときを楽しみ,苦しんでいればいい時なのにと。
しかし,原告たちはきっぱりと言います。「僕たち,私たちは,朝鮮学校での教育を通じて,自分のルーツを否定することなく堂々と朝鮮人として日本社会で生きていく力を身につけることができた。その学校を守るためには何でもやる」と。
朝鮮学校に足を運んだ多くの人が,朝鮮学校の生徒たちの明るさ,人なつこさにひかれるようになります。それは,朝鮮学校が,生徒たちにとって,「安全な家」であり,同じルーツをもった朝鮮人の友だち,朝鮮人の先生,朝鮮人の職員,そして朝鮮人または自分の子どもにルーツを伝えたいと願う保護者たちに囲まれて,日本社会にこびることなく,堂々と朝鮮人でいることができる場であるからだと思います。そして,原告たちが守りたいのはそんな朝鮮学校なのです。
日本社会には,このような民族教育の場である朝鮮学校で学ぶ権利を保障する義務があります。私たちネットワーク愛知は,この無償化問題をめぐる裁判を最後まで支援しつづけます。正義は朝鮮学校と適用を求める私たちにあると信じて疑いません。